「大丈夫かどうか見てあげようか?」

あたしを見下ろして、佐野くんがにやにや笑う。

確かにさっきは胸が痛いって言いながら泣いたけど、それは佐野くんとのすれ違いのせいで苦しかったからで。

だけど今はもう……


「そんなのいらない!もう大丈夫だし!!」

あたしが大きく首を横に振って拒否すると、佐野くんがわざとらしく片眉を寄せる。


「でも、あんなに痛がってたから心配なんだけど」

佐野くんはそう言うと、ブラウスの上に羽織ったカーディガンの中にすっと手を差し込んだ。


「だから、大丈夫だって」

真っ赤になって、カーディガンの中に侵入する佐野くんの手を両手で押し留める。

必死で抵抗していると、佐野くんがふて腐れたようにつぶやいた。


「早瀬のケチ。今度は全部見せてくれるって言ってたくせに」

佐野くんのその言葉で、いつかの男子更衣室での会話を思い出す。


「そ、そんなこと言ってない!だいたい、ここ学校だし。保健室の先生が戻ってくるかもしれないし――」

必死で反論すると、佐野くんがあたしの両腕をつかんで顔を近づけてきた。