「痛い」
怪我自体はたいしたことないはずなのに、もう一度その言葉を口にすると痛みが増した。
傷口から身体中に、ヒリヒリ、ズキズキとした鈍い痛みが広がっていく。
立ち上がれなくて座り込んでいると、後ろから追いかけてきていた佐野くんがあたしの前にしゃがんで深い息をついた。
「はぁ。やっと止まった。お前、泳げないくせに何でそんなに足速いんだよ」
佐野くんが肩で息をしながら、呆れ顔であたしを見つめる。
「別に、運動音痴なわけじゃないもん」
涙や鼻水でひどいことになっている顔を佐野くんからそらすと、彼が呆れたように笑った。
「でも、どんくさいけどな」
からかうようにそう言って、佐野くんがあたしの両手首をつかむ。
「それより、ケガは?」
佐野くんはあたしの膝と両手の平から滲む血に気づくと、ほんの少し眉をひそめた。
「立てる?とりあえず保健室行こう。他には痛いとこある?」
佐野くんがあたしの顔を覗き込みながら、優しい声音で話しかけてくれる。
その声を聞いた瞬間、苦しいくらいに胸がきゅぅっと強く締め付けられた。



