今はプールの補習中で。
佐野くんはただ、あたしの泳ぎの練習に付き合ってくれてるだけで。
あたしが浸かってるのは、熱いお風呂でもなんでもなくて、水温の冷たい学校のプールなのに。
佐野くんの表情と言葉に、間違って逆上せそう……
「早瀬。そろそろ始めれる?」
ぼんやりしていると、佐野くんがあたしに声をかけた。
急かすようなその声に、あたしは自分の立場を自覚してはっとする。
「あ、はい。すみません」
「早瀬のタイミングで、水に顔つけてみて」
佐野くんの言葉で一瞬熱に浮かされたあたしは、同じく彼の言葉で現実に引き戻された。
佐野くんがかけてくれた言葉は殺し文句じゃなくて、水が苦手なあたしへのただの親切心だ。
当たり前なことなのに、なぜかちょっとがっかりして揺れる水面に視線を落とす。
そう、練習。
練習して、早く再テスト合格して。
残りの夏休みを謳歌しないと。
あたしはゆっくりと数回深呼吸すると、目を閉じて水面に顔をつけた。



