透明な青、揺れるオレンジ



頭のてっぺんから指先までが一瞬のうちに固まって、千亜希に電話をしようと握り締めていたスマホが手の中からぽとりと落ちる。

それが地面に叩きつけられると、辺りに大きな衝撃音が響き渡った。

その音を聞いた佐野くんが反射的に振り返る。

そして彼の後ろで凍りついたように立ち尽くしているあたしをみつけると、驚いたように大きく目を見開いた。


「早瀬?」

佐野くんが困惑した顔であたしを見つめる。

名前を呼ばれてはっと我に返ったあたしは、地面に落ちたスマホを拾い上げると一目散にその場から逃げ出した。


やっぱり間に合わなかった。

町村さんが佐野くんに抱きつく。

その光景が走るあたしの目の前にちらつき、何度も何度もフラッシュバックする。

嫌だ。いやだ。

たとえもうこのまま振られるんだとしても、あんなところ見たくなかった。


佐野くんは町村さんのことが好きになったの?

もしかしたら本当は、初めから彼女が好きだった――…?


「早瀬、ちょっと待て」

後ろから佐野くんの声が追いかけてくる。

だけどあたしは立ち止まらず、全力で走った。