覚悟を決めて目を開ける。
千亜希、まだ教室にいるかな。
間に合わなかったことを報告したら、本当に佐野くんの代わりにぎゅーっと抱きしめてくれるだろうか。
ポケットからスマホを取り出してとぼとぼと歩き始める。
そのとき、プールのそばにある更衣室の影から誰かの話し声が聞こえてきた。
何気なく視線を向けると、オレンジの髪の男子の制服の背中が見えた。
「佐野くん?」
よく見ると、彼の向こう側には背の小さい女子が立っている。
佐野くんの影からちらりと覗き見えたその子は、町村さんだった。
何をしているんだろう。
会話の内容は聞こえないけれど、傍目にふたりは親密な話をしているみたいに思えた。
そんな光景なんて見たくないのに、気になってそこを立ち去れない。
息を潜めてふたりの様子を見つめていると、突然、町村さんが佐野くんの胸に抱きついた。
飛びつくように抱きついてきた町村さんの身体を、佐野くんの腕がとっさに支える。
それを目の当たりにした瞬間、全身が凍りついた。



