プールの前に辿りつくと、入り口のフェンスのドアを押し開けて中を覗き込む。
けれど、そこにはもう誰もいない。
無人のプールの水面で小さなさざ波が揺れているだけだった。
遅かったんだ。
入り口のフェンスの金網をぎゅっと握り締めて唇を噛む。
あたしが迷ったりしたからだ。
あんなにも悩んで泣いて、佐野くんにちゃんと話をしようと決めたのに。
彼に会うことすらできないまま終わってしまうんだ。
無人のプールの水面を揺らす波を見つめるあたしの心は空虚だった。
入り口のフェンスのドアを静かに閉める。
立ち止まって目を閉じると、佐野くんとの甘い記憶がいくつも蘇ってくる。
この夏。
ここでオレンジのアイスキャンディをふたりで囓って、告白されて。とろけるようなキスをした。
でも、そんな幸せなときはもうやってこないかもしれない。



