シャワーに並ぶ集団の中には、佐野くんの姿もある。
その中で一際目立つオレンジ色を見つめながら躊躇っていると、千亜希があたしのそばでため息をついた。
「迷うなら今ここで諦めなよ。碧の佐野くんへの気持ちはその程度ってことでしょ?このまま自然消滅させちゃえば?そしたらこれ以上無駄に傷つかずにすむよ」
「それは、やだ」
「だったら、迷うことないじゃん」
千亜希があたしの肩を叩く。
「すぐ電話出れるようにしといてあげるから、安心して行っておいでよ」
「あたし、振られる前提?」
顔をしかめると、千亜希があたしの眉間を突っついた。
「碧、ネガティブ過ぎ。あたしは、碧が笑いながら電話かけてくるのを待ってる」
千亜希があたしの顔を覗き込んで、にこっと笑う。
彼女の言葉が心にジンと沁み入る。
行こう。
そう決めたら、迷っている暇はなかった。
急いで立ち上がると、鞄をつかんで教室を飛び出す。
廊下に出たところで千亜希を振り返ると、彼女があたしにひらひらと手を振った。
「行ってらっしゃい」
「ありがとう」
あたしは背中を押してくれた千亜希に精一杯のお礼を言うと、廊下を走ってプールへと急いだ。



