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「あたしは、碧がもう一度ちゃんと佐野くんと話しに行くべきだと思うよ」
ここ何日かで、佐野くんとあたしの間に起きたこと。それから、昨日町村さんに言われたことを話すと、ずっと黙って話を聞いてくれていた千亜希が冷静な声でそう言った。
「でも、行ってももう遅かったら?」
不安な面持ちで千亜希を見上げる。
完全に佐野くんに嫌われていたら、あたしは彼から別れを告げられるかもしれない。
それが怖い。
「もし遅かったら、あたしが佐野くんの代わりにぎゅーってしてあげるよ」
千亜希はにっこり笑うと、両腕を広げてあたしを抱きしめる真似をした。
「そんなのいらないし」
小さな声でぼやくと、千亜希が笑いながらプールの方に視線を向けた。
「行くなら急ぎなよ。練習、終わってるっぽいよ」
千亜希に促されて、あたしもプールに視線を向ける。
確かに、練習が終わったらしい。
少し前までプールで泳いでいたはずの部員達が、シャワーの前に列を作り始めていた。



