翌日の放課後。

帰る準備を整えたあたしは、まだ席に座っている千亜希の傍に歩み寄った。


「千亜希、今日暇だったら遊んで帰らない?」

「え、今日は練習見て帰らないの?」

笑いながら誘いかけたあたしを見上げて、千亜希が不思議そうな顔をする。

あたしは少しの間無表情で黙り込んだあと、すぐにまた笑顔を作った。


「今日はいいの」

「ふぅん」

けれど千亜希はあたしの顔を窺うようにじっと見上げて、全く立ち上がろうとしない。


「早く帰ろうよ」

千亜希の腕を引っ張って促したとき、教室の外で誰かがあたしを呼ぶ声がした。


「早瀬さん!」

振り返ると、廊下の窓の向こうで高崎くんが手を振っていた。


「今日はプールにおいでよ。学校のプールでの練習は今日で最後だし」

にこにこと笑いながら、高崎くんが教室中に聞こえるくらいの大声で誘いかけてくる。