「佐野くん、あの……」
それでも何か言わなければと口を開くと、佐野くんがあたしからすっと目をそらした。
そして、無言であたし達に背を向ける。
「おい、翠都。どこ行くんだよ」
高崎くんが大声で呼び止めたけど、佐野くんはそれを無視して一人で歩いていってしまった。
「何だよ、あいつ。意味わかんないし」
高崎くんが頭をかきながら、佐野くんの背中に向かってぼやく。
「早瀬さん。とりあえず、追いかけよ」
高崎くんがあたしを引っ張って走り出そうとしたけれど、あたしは彼の手を離して静かに首を横に振った。
佐野くんにあんなに冷たい目で見られて、追いかけるなんてできない。
あたしの足は教室の床に張り付いたまま動かなかった。
「佐野、くん……」
胸が苦しくて、悲しくて、涙が込み上げる。
あたしは佐野くんの笑っている顔が好きなのに――
最近の佐野くんはあたしに冷たい眼差ししか向けてくれない。



