透明な青、揺れるオレンジ



「そうなんだ」

あたしの話を最後まで黙って聞いて、佐野くんはまたそう言った。

つい長々と話してしまったけど、佐野くんはあたしの昔話になんて興味ないよね……

なんか、変な空気を作り出してしまっただけだ。


「でも、お風呂とかは全然平気だし。頑張るよ」

場の空気を変えようと顔をあげて明るく笑うと、佐野くんがあたしをじっと見つめた。

彼の瞳がとても熱心にあたしを見つめるから、自然と鼓動が速くなる。


「あの、練習は……」

あたしに焦点を合わせたまま、何も言わない佐野くん。

その状況に耐えきれなくなって口を開いたとき、佐野くんがあたしの手を片方ずつ彼の手のひらで包むように握った。


「さ、佐野くん?」

突然のことに、声が変に裏返る。

驚きと動揺で目を白黒させていると、佐野くんがにこりと笑った。


「じゃぁ、やり方変えよう」

「え?」

「このまま、水に顔つけてみな。俺が早瀬の手を繋いでてやるよ」