町村さんのことで佐野くんを怒らせてから2日間、あたしは彼とまともに顔を合わせていなかった。

付き合ってるはずなのに、その間は連絡もとっていない。

佐野くんが怒っているかもしれないと思ったら、怖くてあたしの方から連絡できない。

体育館の裏で。保健室で。あたしを見た佐野くんの目。

どちらも冷たくて怖かった。


やっぱり嫌われたのかもしれない。

そう思うと、毎日顔を出していたプールには行けなくて。

そうでなくても、町村さんのことがあるからそもそもプールに近づくことができなくて。


でも、嫌われていたとしても佐野くんのことは見ていたいから。

放課後になると窓際の一番後ろの席で、こうやってプールの水面を揺らす波間からちらつくオレンジ色を目で追いかける。


「あ」

俯いていると、肘をついてプールに視線を向けていた千亜希が声をあげた。

「え?」

驚いて千亜希の顔を見上げると、彼女がプールを指差す。

「碧、あんまりほっといたら危険だよ。碧が前に言ってたみたいに、ただの幼なじみに恋心が芽生えちゃうかも」