「あれ?今日も練習見に行かないの?」


放課後。

教室の窓際の一番の後ろの席に腰掛けていると、千亜希が声をかけてきた。


「水泳部が学校のプールで練習するのって今週までなんでしょ。あと2日しかないのにいいの?」

千亜希はあたしの隣の席に腰をかけると、一緒に運動場の片隅にあるプールに視線を向けた。

プールでは既に水泳部の部員達が練習を始めている。

少し前までは太陽の光でキラキラと反射していたプールの水面は、夏よりも日差しが弱くなったためか以前ほど眩しくない。

でも透明で青いプールの水面は相変わらず小さな波でゆらゆらと揺れていて、その波間を時折ちらつくオレンジ色にあたしはずっと目を奪われていた。


「うん。ここから見学するんだ」

あたしが答えると、千亜希が窓枠に肘をつきながら唇を尖らせて「ふぅん」と言う。


「佐野くんとなんかあったの?」

「別に、そういうわけじゃないけど……」

プールから視線をそらして口ごもる。

「でも碧、ここ2、3日全然元気ないじゃん」