「大事なものなんだったら、明日練習中に探してみようか?」

「大事なものって言うか……オレンジ色の――」


高崎くんに落としたストラップの説明をしかけたとき、入り口の方でフェンスの金網がカシャッと擦れる音がした。

人の気配がして、あたしと高崎くんは同時にプールの入り口を振り返る。

けれど、確かに金網の音と人の気配がしたはずなのにそこには誰もいない。


「あれ?今入り口で音がしたよね」

あたしたちはお互いに不思議そうな顔をして首を傾げた。


「何か怖いな。マジで河童だったりして」

「え?やめて。あたし、怖い話苦手」

「早瀬さん、そんな感じする。さっさと出て帰ろう」

入り口で聞こえた金網の音で、あたしが話しかけたストラップの話は途切れてしまう。

でも改めてそのことを高崎くんに切り出すタイミングもつかめない。


あたし達は二人でプールを出ると、学校の校門の前で別れてそれぞれの家に帰った。