佐野くんは、何してるんだろう――
町村さんの具合が悪くなって、傍を離れられないとか?
保健室に様子を見に行ってみようか。
そう思ったけれど、さっき佐野くんのことを怒らせてしまったからそれも気がひける。
今日のところはこのまま一人で帰った方がいいのかもしれない。
あたしはため息をつくと、ようやく重たい腰を上げた。
ゆっくりとプールの傍を歩いて出入り口のほうへと向かい始めたとき、プールの底の方で何かが光ったような気がした。
「ストラップ……」
あたしは小さく呟くと、プールサイドにしゃがんで光るものが見えたプールの底に目を凝らした。
よく見ると、プールの真ん中辺りで何か黄色いものが光っているような気がする。
でも、プールの水面が小さく波打っている上に、薄暗くなり始めた空の色が映っていてそれがストラップなのかどうかがよくわからない。



