複雑な思いを抱えながらプールサイドでぽつんとつっ立っていると、高崎くんがあたしの方に歩み寄ってきた。
「早瀬さん、ベンチに座って練習見学しとけば?翠都もそのうち戻ってくるだろうし。奈緒ちゃんも休めば落ち着くだろうから、心配しなくても大丈夫だと思うよ」
「そうかな……」
「奈緒ちゃんって翠都の幼なじみだろ。だから、急なできごとであいつも取り乱しちゃったんじゃない?」
高崎くんが明るい声で励ましてくれる。
彼は、佐野くんが町村さんを庇ったことをあたしが気にしていることに気づいているみたいだった。
部外者なのに、水泳部の部活前に騒動を起こしたうえ、変な気まで遣わせて。
すごく申し訳ないな。
「ありがとう」
高崎くんに少し微笑んで見せると、彼はあたしを安心させるように明るい表情で笑ってくれた。



