透明な青、揺れるオレンジ



「佐野くん、練習あるでしょ。あたしが付き添う」

あたしが佐野くんに代わって町村さんの腕をつかもうとすると、彼女が突然ぐらりとよろけた。

そして、佐野くんのほうに体重をかけるように寄りかかる。


それを見た佐野くんは、無表情であたしに小さく首を振った。


「早瀬じゃ保健室まで支えられないだろ。俺が行くからいいよ」

佐野くんに寄りかかる町村さんの顔色は、プールから引き上げられた直後よりもずっとよく見えるのに。

身体には力が入らないのか、佐野くんに寄りかかってぐったりとしている。

あたしも、プールで溺れたときは不安で苦しかったし。

顔色がよく見えたって、本当の体調の良し悪しは本人にしかわからない。

あたしはそれ以上何も言えなくなった。

こんな状況だから、「あまり佐野くんに近づかないで」なんてことも言えない。

あたしは町村さんを支えながら歩いていく佐野くんをただ黙って見送るしかなかった。