「わざとじゃないんだろうけど、早瀬の肩があたって奈緒はプールに落ちたんだろ?俺が助けなかったら危険なことになってたかもしれないのに、何ストラップの心配なんてしてんだよ」
「ごめん、でも――」
確かにあたしが無神経だった。
だから佐野くんが怒るのはわかる。
でも、千切れたのは佐野くんにもらった大切なもので……
「奈緒、一応保健室で休んどけよ。ついて行ってやるから」
佐野くんが町村さんの背をさすりながら、彼女をゆっくりと立ちあがらせた。
「ごめんね、翠都……」
立ち上がった町村さんが、佐野くんのほうに少しよろける。
佐野くんは、そんな彼女を胸で受け止めて肩を支えた。
状況を考えたら、嫉妬している場合じゃない。
だけど佐野くんの胸に受け止められた町村さんが彼の腕の中で嬉しそうにそっと微笑んだような気がして。
あたしはどうしようもない不安にかられた。



