「さ、佐野くん……」
水面から顔を出した佐野くんと町村さんを泣きそうな顔で見つめる。
ただおろおろとするだけで何もすることができないあたしの目の前で、佐野くんが町村さんを抱えてプールサイドへと引き上げた。
助け出された町村さんは、手の平と膝を地面につきながら苦しそうに何度も咳をする。
「町村さん、大丈夫?」
プールサイドで咳込んでいる町村さんの隣にしゃがんで顔を覗き込むと、彼女は苦しげな表情で頷いた。
「奈緒、大丈夫か?」
町村さんのあとからプールサイドへ上がってきた佐野くんも、彼女の背をさすりながら心配そうに声をかける。
急いでプールから上がってきたのだろう。
佐野くんの髪は額や頬に張り付いたままで、髪の毛の先からは水が細い筋となって流れるようにプールサイドに落ちていた。
「ごめんね。あたしの不注意で……」



