透明な青、揺れるオレンジ



「ちょっと……」

焦って掴まれた手を振り払おうとすると、佐野くんはより一層強くあたしのことを引き寄せた。

そのせいで、彼の胸に頬が触れそうなくらい距離が近くなる。


「さ、佐野くん?」

プールの中で、こんな接近されたらやばいよ。

今、水泳部の人達部活中だし。

もしかしたらこのまま抱きしめられる、とか。


ひとりで勝手な妄想して赤くなっていると、佐野くんがあたしの手首をぐいっと引っ張って両手に何かを掴ませた。

それと同時に、接近していた彼の身体がすっと離れる。

ふと手元を見ると、あたしはプールの側面の壁に向き合うようにしてその縁を持たされていた。


「ここ、掴んでて」

自分の手元を見つめながらぽかんとしていると、佐野くんがちょっと苦笑いした。


「ここで壁を持ったまま浮く練習。いきなり俺みたいに泳げっていうのムリだから、早瀬の場合はまず水の中で浮く練習からしてみろよ」

佐野くんに言われ、彼があたしを引っ張ったのはプールの壁際にあたしを誘導するためだったのだとようやく気がついた。