あたしはベンチに両足を開いて座る佐野くんの数歩前で立ち止まると、小さく首を傾げた。


「早瀬。遠い」

立ち止まったあたしを見上げて、佐野くんが苦笑する。

仕方なくあと一歩佐野くんの方に近づこうとしたとき、彼があたしの手をつかんでぐいっと引き寄せた。


身体が少しよろけて、あたしは佐野くんが両足を開いて座るベンチの隙間に両膝をつく。


顔を上げると、ベンチに膝をついたあたしと佐野くんの目線はちょうど同じくらいだった。


急に佐野くんとの距離が近くなったせいで、自然とあたしの鼓動が高鳴る。


うっすらと頬を赤くして目の前の佐野くんを見つめていると、彼がふっと柔らかく微笑んだ。


その笑顔にときめいたのも束の間、佐野くん左腕があたしの腰に回り、彼の右手があたしの耳元に添えられる。


思わずきゅっと目を閉じると、佐野くんの唇があたしの唇に吸い付くように触れてきた。