「もう遅いって。高崎がすげぇ見てた」
佐野くんは不機嫌な声を出すと、あたしが上半身に巻きつけたバスタオルを剥ぐように奪い取った。
「わかったらさっさと着替えろ」
「はい」
あたしは小さく頷くと、佐野くんのジャージを握り締めて立ち上がった。
そして、ロッカーだけが並ぶ見通しの良い更衣室できょろきょろと視線を動かす。
「あの、あたしはどこで着替えれば……」
おずおずと訊ねると、佐野くんはベンチに座ったままあたしを見上げて悪戯っぽく笑った。
「ここで着替えれば?女子更衣室は多分最後のやつが鍵かけて帰ってると思うし」
「で、でも。ここには佐野くんが……」
佐野くんの発言に、身体中の体温が上昇する。
「別にいいだろ。俺は早瀬と付き合ってるんだし」
「だ、だけど」
顔を真っ赤にして口をもごもごと動かしていると、あたしを見上げていた佐野くんがおかしそうに「ぷっ」と声を立てて吹き出した。



