「あのとき、翠都の一番はあたしだって思ったのに」
町村さんの声が脳裏に蘇る。
彼の一番て何?
それはどういう意味?
あたしは佐野くんに名前で呼ばれたことなんて一度もないのに……
あの子が『奈緒』と呼ばれるのは、本当は幼なじみ以外の理由があるの――…?
まだ空に残る太陽の熱は熱いのに、指先から少しずつあたしの身体が冷えていく。
プールサイドに立ち尽くしたまま動けずにいると、町村さんからタオルを受け取った佐野くんが不思議そうにあたしの顔を覗き込んできた。
「早瀬?何かさっきから変だけど、大丈夫?」
「え?あぁ、うん」
はっとして、慌てて笑顔を作ると佐野くんが訝しげにあたしを見てから少し首を傾げた。
「ならいいけど。あ、もうプール閉めるからちゃんと外で待ってろよ」
あたしににこりと笑いかけると、佐野くんは高崎くんと話しながら更衣室の方へと行ってしまう。
いつもなら佐野くんが笑うと胸の奥がきゅんとして幸せな気持ちになれるのに、今は何だか苦しくて。
言いようのない不安で胸がいっぱいだった。



