部員達は市川先生の周りに一度集まったあと、解散の号令と共に散り散りにシャワーの方へ歩いてくる。
「奈緒ちゃん、タオルちょうだい」
シャワーを浴びた部員の一人に大きな声で呼びかけられて、町村さんは笑顔で彼に頷いた。
「じゃぁ、あたしはまだ仕事があるので」
町村さんはあたしに軽く会釈をすると、プールサイドを走っていく。
走っていく彼女の背中を見つめていると、佐野くんと高崎くんが並んであたしの傍にやってきた。
「早瀬、終わったけど。いつまでぼーっとしてんの?」
佐野くんがあたしに話しかけながら、まだ濡れたままの頭をゆるゆると振る。
その瞬間、オレンジ色の髪の毛の先から水の粒がたくさん飛んできた。
「わっ」
それはしっかりとあたしの方にまで飛んできて、思わず悲鳴を上げる。
「わっ、翠都。お前、水飛ばしすぎ」
あたしと同じように佐野くんに水を飛ばされた高崎くんが怪訝そうに眉を寄せる。
「いいだろ。お前はどうせ濡れてんだから」
「は?お前の飛ばした水が目に入ったんだよ」