つられて笑いかけたあたしに、佐野くんはまた柔らかく唇を押し付けてきた。


少し開いていた口内に佐野くんの舌が侵入してきてだんだん深いキスになる。


佐野くんが角度を変えるたび、あたしの背中は後ろのフェンスに強く押し付けられる。

それにあわせて金網が背後でカシャカシャと煩く鳴る。

その音をどこか遠くに聞きながら、あたしは佐野くんの深くて優しいキスに身体ごと全部とろけそうになっていた。

鼓動は高鳴っていくばかりで、心臓のドキドキが止まらない。


ようやく佐野くんの唇が離れたとき、手に持っていたオレンジ味のアイスキャンディは完全に棒から溶け落ちてしまっていた。

同時に、町村さんのことで感じていた不安もあたしの胸からすっかり消え去ってしまう。


足元にできたオレンジ色の小さな水溜りを見て、あたし達は顔を見合わせてクスクスと笑った。

何も心配することはない、と。

そう思わせてくれたのは、甘くて優しいオレンジ味のキスだった。