「さ、佐野くん?」


近いし……

佐野くんがいきなり距離を詰めてくるから、激しい動揺で鼓動が速くなる。

熱が出てるのかと思うくらい頬が熱い。


「それあげたし、今度は俺がもらっていい?」

「へ?」

「アイス」


佐野くんはアイスキャンディを持っているあたしの手をつかむと、既に半分くらいになっているそれを一口齧った。

至近距離で見たその仕草がすごく綺麗で、あたしの体温がさらに上昇する。

耳まで真っ赤にしながら、アイスキャンディを齧った佐野くんの唇を見つめていると彼がにやりと笑った。


「早瀬、顔赤いけど」

「え?」


恥ずかしくて下を向きかけたとき、すっと佐野くんの顔が近づいてきて彼の唇があたしの唇にそっと触れた。

柔らかくて温かい感触と共に、甘いオレンジの味が口の中にじんわりと広がる。


「甘っ」


佐野くんがいったん唇を離して、眉を寄せながら笑う。