佐野くんの手でキラキラと光るオレンジ色のビーズは、プールから上がったあとに彼の髪の毛から弾け飛ぶ水の粒みたいに思える。
「じゃぁ、ほしい」
あたしは勢いよくそう言うと、佐野くんを見上げて笑った。
「いいよ。じゃぁ、手出して」
あたしがアイスキャンディを持っていないほうの手を差し出すと、佐野くんがそこにストラップを載せてくれた。
手の平でキラキラと光るそれは、綺麗で可愛い。
それに佐野くんから何か物をもらうのは初めてで。
だから、すごく嬉しかった。
ストラップを見つめて佐野くんに不審に思われない程度ににまりと笑う。
手の中に大切にキュッと握り締めようとすると、不意に佐野くんがあたしの腕をつかんだ。
ドキリとして顔を上げると、佐野くんがあたしの腕を引っ張って背中からフェンスの金網に押し付けた。