「あれ、奈緒?て言うか、お前に先輩とか呼ばれるとキモい」
「だって、部活中は先輩でしょ?」
佐野くんがタオルを受け取ると、町村さんはいたずらっぽく彼に笑いかけて、案外あっさりと彼から離れていった。
「俺、早瀬にタオル渡さなかったっけ?」
町村さんが去ったあと、佐野くんが不思議そうに首を傾げる。
「マネージャーがタオル渡すのが決まりらしいよ」
あたしの言葉に佐野くんはますます不思議そうに首を傾げた。
「へぇ。そんな決まりあったっけ。ていうか奈緒、妙にはりきってんな」
佐野くんはプールを挟んだ向かい側で、他の水泳部の人と楽しそうに話している町村さんを見て目を細めた。
彼女を微笑ましげに見つめるその瞳は優しくて。
胸に、小さな嫉妬心が芽生える。
町村さんは、佐野くんの幼なじみなんだよね……?
ふつふつと湧き上がる、濁った感情。
やだな、あたし。
「どうした?早瀬」
うつむいてしまったあたしの頭を、佐野くん手がふわりと撫でる。



