「早瀬先輩。それ、翠都のタオルですよね?」
「あぁ、はい」
「じゃぁ、こっちに貸してもらえますか?」
そういうなり、町村さんがあたしの腕の中から佐野くんのタオルを奪い取る。
「え、でも」
戸惑い気味に町村さんを見上げると、彼女がにこやかな笑みを浮かべた。
「部員のタオルはマネージャーがまとめて一ヶ所に置いておいて、必要なときに渡してるんです」
「はぁ」
夏休み中の補習であたしも水泳部の活動を見てたけど、そんな制度あったっけ。
ぽかんとしていると、町村さんが屈託のない顔で微笑んだ。
「だから、もし見学に来られるなら自分でタオルを持ってきてくださいね。早瀬先輩」
彼女は笑っているのに、その言い方にはどこか棘があるような気がして。
佐野くんのタオルを持って歩いて行く町村さんの背中を見つめながら、少し怖くなった。



