「あ、早瀬さんだ」
佐野くんに引っ張られて歩くあたしに、顔見知りの部員の人たちが声をかけてくれる。
結局帰るに帰れなくなったあたしは、流されるままに見学用のベンチに座った。
ぼんやりプールを眺めながらベンチに座っていると、準備体操を終えてシャワーを浴びた佐野くんがあたしに近寄ってきた。
「早瀬、これ持っといて」
佐野くんがあたしの方にタオルを投げて寄越す。
「あぁ、うん」
頷くと、佐野くんはにこっと笑ってプールに入っていった。
泳ぎ始めた佐野くんを見つめながら投げ渡されたタオルをぎゅっと抱きしめると、太陽の匂いとともに彼の匂いがする。
何のために見学にやってきたのかも忘れてキラキラ光る波の中を泳ぐ佐野くんをぼんやりと見つめていると、誰かがあたしの肩を軽く叩いた。
はっとして顔を上げると、目の前に町村さんが立っていた。
彼女はあたしににっこりと微笑みかけると、あたしの腕の中にある佐野くんのタオルを指差した。



