「あ、あの。すいません」
「何してんの、早瀬」
相手の顔もよく見ずに頭を下げると、頭上からあたしの好きな人の声がした。
「さ、佐野くん!?」
驚いて思わず声が裏返る。
あたしの声を聞いた佐野くんが「ぷっ」と吹き出した。
「驚きすぎだろ。それより早瀬、練習でも見に来てくれたの?」
「あ…うん、まぁ。そんな感じかな」
町村 奈緒の存在が気になって偵察に来たとは言えないから、言葉を濁して愛想笑いをする。
「じゃぁ、入れば」
佐野くんがあたしを見てにこりと笑う。
「いや、いいよ。部外者が中に入っても邪魔だし。フェンスの外から見てるから」
町村さんのことを偵察に来ただけのあたしは、佐野くんに後ろめたくて大きく首を横に振った。
「部外者って。今さらだろ」
首を傾げて笑いながら、佐野くんがあたしの手をつかむ。
そうしてそのまま強引に、あたしをプールサイドへと引き摺り込んだ。



