「そんなに気になるなら毎日放課後水泳部の練習を見に行けば?それでその女にアピールすればいいじゃん。『佐野くんはあたしの彼氏です』って」


「だけど……」

そんなことしてうざがられたら嫌だし。


「なんなら、あたしもついていくよ。ふたりで行った方が相手を威圧できるんじゃない?」

視線を上げると、千亜希が何か企むようににやりと笑う。


「いいよ。千亜希はそうやって佐野くんに近づこうとしてるだけでしょ」

千亜希の企みなんてお見通し。


「そんなわけないじゃん。友達の危機なのに」

そう言う千亜希は何だか楽しそうで。あたしはふて腐れて彼女を軽く睨んだ。


「でも、一応放課後になったら様子見に行ってみなよ」

ふて腐れているあたしをなだめながら、千亜希が笑う。


「行かないよ」

強がってそう答えたものの、午後の授業が始まっても佐野くんと町村さんのことが気になって仕方なかった。