「絶対その女、佐野くん狙いだよ」
「やっぱりそうなのかな」
昼休みの教室。あたしは千亜希の言葉にため息をつきながら机に伏せた。
「あの挑戦的な笑みは、よっぽど自信があるって証拠だよね」
机に伏せたまま顔を窓の方に向けると、運動場の片隅にあるプールが見えた。
遠目に見えるプールの表面は、教室でため息をついているあたしをあざ笑うみたいに、太陽光を反射してキラキラと光っている。
「何弱音吐いてんのよ、碧。相手が幼なじみだからって、付き合ってるのはあんたなんだから。自信持ちなって」
「だけど、あるとき急に幼なじみが大事な存在って気づいちゃうパターンだってあるじゃん。それにあの子、小さくて目が大きくて。確実にあたしよりずっと可愛かったよ」
プールを見つめながらぶつぶつと言っていると、千亜希が苛立ったように息を吐いた。