「知ってます」
慌てて名乗ると、町村さんが意味ありげにそう言って微笑んだ。
けれどそれは親しみのこもらない、他人行儀なその微笑み方で。
あたしは彼女の言葉にどう反応していいかわからなかった。
「奈緒、本気で水泳部のマネージャーすんの?本気なら、イチ先に聞いてくるけど」
「本気だよ」
彼女があたしに微笑みかけたまま、佐野くんにそう答える。
「じゃあ、ちょっと待ってて。あ、早瀬もな」
佐野くんはついでみたいにあたしにも声をかけると、あたしと彼女を残してプールへと引き返していった。
「やっぱ、綺麗」
市川先生の元へ駆けていく佐野くんの後姿を見送っていると、あたしの背後で小さく呟く声がした。
「え?」
振り返ると、町村さんと目が合う。
彼女はあたしをしばらくじっと見つめたあと、小首を傾げた。
背が小さくて顔の小さな彼女がそうすると、やたらに可愛らしく見える。
「早瀬先輩って、翠都の彼女なんでしょ?」
町村さんが佐野くんを翠都と呼ぶ。そのことがやけに気にかかった。
幼なじみだから、仕方ないのかな。
そういうものなのかな……



