「何って、そのままの意味ですよ」
「何で敬語?」
「だって、学校では先輩でしょ?一応」
彼女も佐野くんに笑いかける。
ふたりで笑いあっているその姿はとても仲がよさそうで。
彼女はもちろん、佐野くんもあたしの存在なんて忘れているみたいだった。
ねぇ、佐野くん。
その子は誰?
疎外感を覚えながら、でも動くこともできずにその場に立ち尽くしていると、不意に彼女があたしに視線を向けた。
佐野くんから視線を外した彼女の瞳が、一瞬刺すようにあたしを見つめる。
ドキリとして一歩後ずさると、彼女がすっと口角をあげた。
「あ、あんまり長々と話し込んじゃいけなかったかな?」
口元だけであたしに微笑みかけながら、彼女が首を傾げる。
それでようやく、佐野くんがあたしを思い出したように振り返った。
「ごめん、早瀬。こいつ、一学年下の、俺の幼なじみ」
「はじめまして。あたし、町村 奈緒(マチムラ ナオ)っていいます」
彼女がはきはきとした声でそう名乗る。
「あ、えっと。早瀬 碧です」



