透明な青、揺れるオレンジ



「ふぅん。俺、有名なんだ?」

「知らないけど、友達が言ってたから」

「へぇ」

佐野くんはあたしの顔を見つめながら独り言みたいに相槌を打つと、苦笑いした。


「それより、さっきのお前のシャレ?しょうもなさすぎ」

さっきのって。

名前の通りスイスイ泳いでるって言ったことだろうか。

佐野くんにまるでバカにするような口調でそう言われて、今さら自分の発言が恥ずかしくなった。

わざわざ、少し間をおいてそんなこと指摘しなくても。

て言うか、最初に名前がどうこう言ってきたのは佐野くんだし。

そう思うと今度は恥ずかしさが消えてちょっと嫌な気分になる。

彼に見つめられて一瞬でもときめいてしまった自分が悔やまれた。

千亜希は佐野くんのことを爽やかイケメンなんて言ってたけど。

初めて言葉を交わすあたしの泳ぎや発言をバカにしてきたりして。

どっちかというと、ちょっと嫌なやつじゃないか。