そう言いながらも、「佐野くんかっこいいなぁ」とうわ言のようにぼやいている千亜希が本当にわかっているかはかなり疑わしい。

あたしはため息をつきながら、窓の向こうに視線を向けた。


あたしの教室からは、かなり遠目にだけれど運動場の片隅にあるプールが見える。

今は無人のプールの水面は、まだ強い九月の日差しを受けてキラキラと光っている。

日差しを受けながら揺らめいて見えるプールの水面を見つめていると、その中を漂う佐野くんの姿が思い出された。



「俺と付き合ってくれる?」

佐野くんにそう言われたのは夏休みの半ば。

あたしが補習のテストに合格して、彼が県大会の出場選手に選ばれた日。

プールの入り口のそばで。

あのときのことを思い出したら、今も胸が高鳴る。