「近くで見ると、ほんとかっこいいね。佐野くん」


教室に戻ったあと、千亜希は何だか興奮気味だった。

胸の前で手の平を合わせて指を握り合わせながら、どこかぼんやりと遠くを見ている。

あたしはそんな親友と向き合って座りながら、ふて腐れた顔で頬杖をついていた。


「碧は夏休みに最後まで水泳の補習受けてたから佐野くんと仲良くなれたんでしょ?あーぁ、あたしも最後まで補習受ければよかった。そしたら佐野くんに……」

「だ、だめ。絶対ダメ!」


あたしは何かよくないことを想像しているらしい親友の前で、全力で頭を左右に振った。


「佐野くんは、あたしの彼氏なんだから」

全力で頭を振ったわりに自信なさ気な小さな声で主張すると、千亜希は笑ってあたしの肩をぽんと叩いた。


「わかってるって」