「何?」

千亜希と顔を見合わせていると、前の方から下級生と思われる女子の囁き声が聞こえてきた。


「あ、さっき賞状受け取ってたオレンジの髪の人だ」

「この学校にあんなかっこいい人いたんだね。二年生の先輩だよね?」


彼女たちのそんなひそひそ話を聞きつけたあたしは、人込みの中で爪先立ちをしてみた。

けれど、前方には黒や茶色の頭、頭、頭……


あたしが探している色は見当たらない。


「千亜希、ちょっとゴメン」

あたしは千亜希の肩に手を載せると、勢いをつけて、バレリーナに負けないくらいの爪先立ちをしてみた。

安定が悪くて足元がゆらゆらと揺れるけれど、その分さっきよりは少しだけ見通しがよくなる。


さらにもう少し頑張って爪先に力を入れて背伸びをすると、斜め前方にあたしの探している色が見えた。