「ねぇ、今さぁ。佐野くん、あたしの方見て笑わなかった?」

「えぇ、何言ってんの?今のは完全に私の方見てたよ」


前に立っているクラスメートの女子が、小声でそんな言い争いをしている。


違う、どっちにも笑ってないよ!!

たぶん、だけど……

あたしは右の頬を少し引き攣らせながら、彼女たちの背中を睨んだ。


佐野くんはあなた達に笑いかけたわけじゃない。

たぶん、だけど……

だって彼は――