「断れるわけないじゃん。だってあたし、もう佐野くんのことすごく好きだもん」

俺の胸に頭を預けたまま、早瀬がぼそりと漏らす。

その言葉が嬉しくて、俺は感情の赴くままにぎゅっときつく彼女を抱きしめた。


「いつから?」

「え?」

「いつから好きって思ってくれてた?」

腕の中にすっぽりと収まった早瀬の額に唇を押し付ける。


「プールで初めて話したときかな」

くすぐったそうに身を竦めた彼女が、腕の中で照れ臭そうに笑う。


「俺も、初めて話したときかな」

「ほんとに?同じタイミングだったんだね」

嬉しそうに笑って下を向く早瀬は、俺と彼女の言うタイミングが本当は全然違うことに気づいてない。

早瀬の思ってる初めては、きっと今年の夏休みのプール。

だけど俺が言ってる初めては、去年の夏休み。

今キスを交わしたこの場所。

でも、それは俺の心の中だけに秘めておく。