鳥にでも突っつかれたのかと思うくらい雑な接触に、反射的に目を開ける。

すると顔中真っ赤な早瀬が、すぐそばでうっすらと涙目になって俺を見上げていた。


「今の、何?」

「キス、だけど……」

ちょっと泣きそうな顔で答える彼女を見おろしていると、ふっと小さな笑いが込み上げてくる。


「アヒルに突っつかれたのかと思った」

「ひどい」

いじけた早瀬が俺から離れて顔を逸らす。

俺はケラケラと笑いながら彼女の腕をつかむと、凭れていたフェンスから背を離して身体を反転させた。

そうしながら、早瀬を引っ張ってその背中をフェンスに押し付ける。

それから早瀬の前に距離を詰めて立つと、彼女の両手をとった。


「佐野くん?」

フェンスに押し付けられた彼女の手から、オレンジのアイスキャンディがぽとりと落ちる。

俺は彼女の指に自分の指を絡めると、そうしたままフェンスの格子状の網をつかんだ。