「そういえばさ、補習のテストに合格したお礼、今してよ」
「え?」
「約束したよな。早瀬からキスしてくれるって」
にやりと笑うと、早瀬の頬が一瞬にして赤く染まった。
「え?ムリだよ。あたし、そんな約束了承してない」
「何で?こないだいっぱいしたし、今さらだろ?」
焦って首を横に振る彼女。だんだんとその耳までが真っ赤に染まっていく。
「で、でも!まだ明るいし、それにこんなとこじゃ――…」
「大丈夫。誰も見てないって」
顔中真っ赤な早瀬を見てクスリと笑うと、俺はプールのフェンスに完全に背中を預けて目を閉じた。
「ほっぺじゃなくて口な」
「ちょっと、佐野くん!」
早瀬の戸惑った声が聞こえる。
でも俺は閉じた目をわざと開かなかった。
目を閉じていても、隣に立つ彼女の動揺がなんとなく伝わってくる。
「早瀬、早く――…」
困っておろおろしているであろう彼女の顔を想像して吹き出しそうになったとき、突然何かが俺の唇にぶつかった。