「これ、どうしようかな」
彼女が抱えていたレポートを身体から少し離して、その表紙をじっと見つめる。
彼女の正面に立っていた俺にも、その表紙が見える。
そこには、大き目の丸文字で彼女の学年とクラス。そして、名前が書かれてあった。
早瀬 碧。
彼女の名前を、頭が勝手にインプットする。
あれ。俺、何勝手にこの子の名前チェックしてんだろ。
自分の行動が恥ずかしくなって、彼女のレポートの表紙から顔を逸らす。
そのとき、プールの入り口のすぐそばにある管理室から、浅井先生がひょっこりと姿を現した。
「おー、早瀬。やっと来たか」
浅井先生の姿を確認した彼女が、ほっとしたように息をついて先生にレポートを差し出す。
「先生、約束通り50枚書いてきました」
「おー、すげぇな」
レポートを手に取った浅井先生が、その束をパラパラと捲りながら笑う。
「ほんとに50枚真面目に書いてくるとは思わなかった」
「これで、明日から補習来なくていいですか?」



