「私、フェイスタオルとそれを入れて小さなトートバッグをプールサイドのベンチに置いてきちゃったみたいで。明日も補習があるからタオルだけなら別にいいんだけど、自転車の鍵がさっきから見当たらなくて。置いてきたバッグの中に間違っていれてるんじゃないかと思って」
「そうなんだ。じゃぁ、とってくれば?」
「それが、入り口にもう鍵がかかってて。職員室に顔出したんだけど、浅井先生も水泳部のイチ先もいないから困ってて……」
彼女がフェンス越しにプールサイドを見やりながら眉尻を下げる。
彼女の困り顔を見ているとつい何とかしてやりたくなって。
気づくと俺は、プールを囲むフェンスに手をかけていた。
「ちょっとそこで待ってろよ」
「え?」
俺は肩にかけていた鞄を地面に振り落とすと、格子状の金網に手足を引っ掛けてするすると登った。
そのままフェンスを乗り越えて、ジャンプしてプールサイドに着地する。
「だ、大丈夫?」
彼女がフェンスに近づいてきて、格子状の金網を握る。



