妖狐と私




「……もしかして、これも……いじめ?」




私はズボンの破れているところを見てつぶやいた。




 そうだよ、前に制服のズボンも破いて帰ってきたことがあった。




 それも膝の部分。




 いじめっ子たちに突き飛ばされたりして、それで転んで、破けたものなんじゃ……。




「……どうしてずっと、気づけなかったの……」




私はまた肩を落とす。




「落ち込むな」




優陽の一言。




「……落ち込むに決まってるじゃん。もっと前に気づけてもよかったのに……」




「だからって、過去は変えられないだろ。」




優陽の言葉は私の胸に突き刺さる。




「葵が落ち込んでどうするんだよ。今の葵のその姿を見たら、弟はもっと落ち込んでしまうだろう。」




「え?」




「あいつはいい奴だ。姉を困らせたくない、落ち込ませたくない、そう思って、何も言わなくなってしまうかもしれないだろ。弟にとって唯一の味方のお前が、気持ちを強く持ってなくてどうすんだ。」




優陽の強いまなざしに、私はハッとした。




 そうだ。




 私が落ち込んでちゃダメだ。




 ツラいのは秋斗なんだから




 私が、秋斗に落ち込んでる姿見せちゃダメだ。




「そうだね……ありがとう優陽。」




「俺は何も言ってない。」




「またそんなこと言う!」




私の顔には、少し笑みが戻っていた。




 本当、優陽はすごい。




 私に、気づけないことを気づかせてくれる。




 本当、すごいなぁ……。