妖狐と私




「知ってた。だって、オレもう小5だもん。それくらい、わかる。おかあさんだって、あんなんだし。」


「……そう……だったの……。」


 しっかりしてるもんね、秋斗……。


 じゃあ、私が秋斗に嘘ついていたことも、もうバレてたんだな。


「……ごめん、秋斗。ずっと嘘ついてて……本当は、私がお母さんから話を聞かされた時に秋斗にも言わなきゃいけないって思ってたんだ。真実を伝えなきゃいけないって、思ったんだけど……結局嘘ついて、秋斗を苦しめることにもなっちゃって……本当にごめんね……。」


「なんで、オレ別に苦しんでなんかない。だってねーちゃん、オレのために嘘ついたんだろ」


「え?」


「オレ、知ってるよ、おとうさんのことも、おかあさんのことも、ねーちゃんのことも。ねーちゃんが、オレをずっと守ってくれてたこと、知ってる。おとうさんのことは、オレが傷つくと思って言わないでいてくれたんでしょ。おかあさんから遠ざけたのも、おかあさんにオレが暴力ふるわれないようにしてくれてたんでしょ。そのかわりねーちゃんがおかあさんから暴力受けてたのも、知ってる。」


 ああ、この子が一番、大人だったんだ……。


 何も言わずに、私たちを見ていた。


 私のことを、見てくれていた。


「秋斗……知ってたのに、なんで怒らなかったの……?」


「オレ、うれしかったから。ねーちゃんが、いつもオレを守ってくれてたの。だから怒ろうなんて思ったことないよ。それに、「仕事だからしばらく帰ってこない」って言われたとき、そのときは「そーなんだ」って思ってたけど、日がたつにつれだんだん、帰ってこない気がしてきた。おかあさんもずっと怒ってるし、「おとうさんは仕事じゃないのか」ってなった。でもずっとオレは「仕事」って言われたままだったから、それ以外まだ知っちゃいけないのかなって。だから、なにも言わなかった。」


秋斗は下を向いてままそう私に話した。


 なんてこの子は、我慢強い子だったんだろう……。


 私はなんて……弱いんだろう。