ちょっとしたゴタゴタから一夜明け、今は希乃来を迎えにいっている。

 え、当たり前じゃん? 喧嘩しようが何しようが、登下校は一緒に、てのがモットー。
 クラス違うし、この時だけは二人だけの時間になれる大事な空間。

 しかし、まぁ、出鼻をくじかれるわけですよ。

「希乃来なら大分前に出ていったわよ? トキ君も一緒かと思ったんだけど」
「すんません、ありがとうございました」

 家の前に姿がないからおかしいなと思えば、案の定、これだ。

「ていうか、あの子の趣味はどうにかならないのかしら。私たちの所為で外れてしまったのだろうけど、離婚してから一層、話そうとなんかしてくれないし」

 彼女の母、ミナさんは所謂「苦労顔」。四十そこそこなのに、白髪を隠しきれていない。けど、俺はこの人が気に食わない。

 だから、ついつい人の親に対して素っ気ない態度をとってしまう。
 10割、俺だけは希乃来の味方であり、理解者であると自負しているから。

 そそくさと話を切り上げて学校へ向かった。

 離れて、冷静になったところでようやく、己の弱さを思い知る。

(それにしても、俺も希乃来も弱いんだなぁ。俺は、味方だろうがなんだろうが、結局は自分の言い分しか通さないガキと同じだ)
 
 五月晴れの下で反省の色を交えた眼を前に向けた。