正直、カッコイイと言ったときの羨望の眼差しよりも、今あるこの状況の希乃来の方が羨ましいくらい、綺麗だ。
 それで思い出して、希乃来の首筋を覗いてみた。ここまで首を晒しているのに気付かなかった。

「そう言えば、傷跡薄くなってる」
「あれからは自傷はしなくなったんだ。というか、仮にも女の俺によく普通に切り込んできたな。その度胸だけは認めてやるよ」
「あ、いや……でも、俺らの間に隠し事してても今更じゃないか? しかも、そういう詳細も俺に言わなきゃダメだなんだぞ」

 目が笑っていなかった希乃来が、はた、とその憤りを雲散霧消にして俺を見た。

「トキには感謝してるんだ。幼馴染みで良かったって、思うよ」

 改まった希乃来の頬には、一筋の光が俺を見せつけるように落ちていった。