あーあ。
 諭すのが遅かったかな~。

 目の前にいるコイツは、「トキ」じゃない。

 気味悪いくらい、人格を変えている。

 周りからは、執着してないように見えて、存外、彼らは、いや、トキは異常な依存性を見せる。

 プリンスに関するなら、あの子は鈍感だから、この気味悪いくらいの依存ぶりに辟易としないのだろう。
 
 かなりの天然と、鈍感と、恋する乙女の盲目さが否めない。

 なんだかんだ、相思相愛のくせに。
 梨乃ちゃんで壁を隔てた張本人が梨乃ちゃんにキレるって、御門違いにも程があるけど、まぁ、心配性のトキだから、起こした行動でもあるし、咎めようにも咎められないのが実際のところ。

 今は目が据わっているコイツも、プリンスに対してあそこまで優しいんだ、性根は腐ってなんかないんだ。
 だから、コイツの異常さにも付き合ってきた訳なんだけど、

「希乃来は俺だけに頼ってきたんだ……」

 とか、小言のようにぶつぶつ呟かれるこっちの身にもなってくれ。
 正直、この場を今すぐにでも立ち去りたい。

 口に出しちゃってること、これ、絶対気づいてないよー。

 釘をさしても、プリンスのこととなると、いつもこう。



「鬱」だよ、一種の。

 危害が加わるのなら、病院行きだけさ。
 一応、平穏。
 一応、プリンス限定に起きる発作のようなもの。
 とだけ、フォローしとけばいいか?

 とにかく、俺が今すべきことは、穏便にことを進捗させること。
 
 俺は、つくづく、キャラの濃い二人と知り合ってしまった、と思う。

 教室へ行き、数少ない友人との談笑を割り込んで呼んだ。

(だって、彼女、あの性格だからね。女同士でツンデレが通るわけナイデショ。そんなのは、男にしか通用しないんだけど、素なんだから……可愛く見えちゃうんだよね)

 自分の恋慕はひたかくす。